朝、目が覚めると雨が降っていた。大阪でフェリーに乗る直前に小雨にふられて以来の雨だ。雨対策をしているので心配はなかったが、雨ということで気分が良くない。
　サイドバッグにカバーを掛けて、レインウェアを着て、宿を出る。今日も国道56号を走る。それほど強くない雨の中、ＪＲ予讃線と並行して北上する。吉田町に入ると、左手下方に宇和海を見ながら、野福峠を目指す法花津坂を登る。行き交う車に水しぶきをかけられながら走る。気分は最悪。短いトンネルをいくつも抜け、峠の長いトンネルを抜けると、宇和町に入る。峠を越えると、43番明石寺に近づく。町はずれのやや高台に４３番明石寺はあった。雨が降っているのに、参拝者は多い。傘を差して石段を登る。雨に濡れたお寺も風情があっていいが、相変わらず気分が乗らない。

　明石寺を後にして、国道にもどる途中、モンベルのレインウェアを着た歩き遍路の男性に声をかける。60歳の方で明石寺へ行く道が分からなくなってしまったとのことだった。国道を再び北上して、八幡浜へ向かうＪＲ予讃線と別れて、一路、大洲を目指す。大洲市手前で今日２つ目の峠を越えなくてはならない。徐々に登りになり、長い鳥坂トンネルを抜けて、大洲市に入った。しかし、トンネルを抜けると、辺り一面、霧で先が見えない。濡れた路面でスリップしないことを祈りながら、行き先不安の下り坂を下りにまかせて駆け下る。霧の中を一気に下り、市街地に入っていき、肱川を渡って、伊予大洲駅に到着した。ここでひと休みすることにした。
　フロントバッグに入れてある地図は水が染みていた。これ以上雨の中を走りたくないので、大洲で宿を探すことにした。観光案内所、電話帳で調べたが、安い宿が見つからない。無理して高い宿に泊まる気はないので、小雨になったところで、内子方面へ進むことにした。
　走り出してほどなく雨が強くなってきたが、構わず先へ進む。内子町へ向かう登りにさしかかったところでさらに雨が強くなってきたので、たまらず脇道の集落で雨宿りをする。すでにフロントバッグ、サイドバックともに水が染みている。雨が止みそうにないので、どこか泊まれるところはないか、あるお宅を訪ねてみると、近くの大師堂に泊まれるのでは、と大師堂を管理しているお宅を教えてくれた。そうこうしているうちに、雨が小降りになったので、泊まれそうなところを紹介してくださったお宅には申し訳ないが、内子町まで行くことにした。しかし、またまた雨が強くなった。何とか峠を越えて、内子町に入った。16時を過ぎ、暗くなってきている。電話ボックスで雨宿りしつつ、役場に電話をして安い宿を教えてもらうことにした。すると、旅館と公共の宿を教えてくれた。旅館には断られたが、公共の宿は夕食を用意してくれるとのこと。内子駅裏の高台にある今日の宿「ハイプラザ内子」へ向かう。宿に着く頃には、雨は止み、代わりに風が出てきた。
　ホッとした気持ちで宿に入ると、時間が遅いので夕食は作れないといわれてしまった。後で夕食の買い出しに車を出してもらうことで事なきを得る。通された部屋はまさに公共の宿といった４人部屋で、１人で使うにはさびしいくらい広々している。早速、濡れた荷物を部屋に広げた。

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