朝食とミカンをいただいて、神社を出発。再び高野山を目指し、ペダルをこぐ。高野山へのメインルートを外れた、南海線沿いの狭い山道を行く。急勾配なので、ほとんど自転車を押して登る。いつの間にか、極楽橋駅を下に見るところまで登ってきた。さらに登っていくと、住宅が現れた。ついに高野山にやってきた。今まで人気のない山道を登ってきたのに、登り切ったところには街が広がっている。不思議な感覚だ。
　まず街の入り口にある大きな大きな山門をくぐる。そして、多くの観光客とともに金剛峰寺を参拝、拝観する。

　高野山を無事参拝し終え、山を下りる。町外れのトンネルを抜けると、登ってきた時と同じような山道に戻った。国道371 号で一気に山を下る。山道では、カーブや対向車が気になる車と違って、自転車はスピードが出せるので、先行する車を抜き去ってしまった。こんな時は気分がいい。国道とは思えない狭い道を下っていき、川沿いに走っていく県道との分岐を過ぎると、登りになった。一気にペースダウン、先ほど抜いた車に抜き返されてしまった。地図を見ると、この先山を越えることになることになるので、遠回りになるが、下りのみの県道を走ることにし、引き返す。休日を河原でバーベキューをして楽しむ人々を横目に走る。
　昨日登った国道390 号に入ると、大きなザックを背負って、金剛杖を持った男性を見つけた。お遍路であろう。声をかけると、八十八カ所を８月から１００日ほどかけて回ったそうだ。昨日高野山を参拝して、これから大阪へ向けて歩くとのことだった。
　国道24号を走り、橋本市を過ぎ、峠を越えると、奈良県五条市に入る。五条駅近くで未成線として終わった五新線跡を見つけた。今日は御所市か大和高田市辺りで泊まろうと考えながら走る。
　ふと前を見ると、ＭＴＢの男性が見える。ペースをあげて、後ろに付く。４０代ぐらいだろうか。奈良盆地に入る峠越えにかかったところで、ＭＴＢに道を譲られ、先行し、峠を登る。きつい登りなので、休みたいところだが、後ろから追われているので、がんばって登る。登り切ったところで、後ろから男性が話しかけてきた。彼に前を譲り、峠を下り、奈良盆地に入る。信号待ちで話をしながら、併走する。今日は高野山近くの温泉に入ってきた帰りだそうだ。今日の宿が決まっていないことを話すと、「家で泊まりませんか」と言ってきた。密かにこの言葉を待っていたのだが、遠慮がちに泊まらせてもらうように返事をした。お宅はこの近くであろうと思っていたら、まだ20�qほど先の斑鳩町にお宅があるということだった。ＭＴＢの男性、Ｎさんは奈良盆地を30キロペースで快走する。わたしも負けずに走る。大和高田を抜け、次第に暗くなってきた。
　日が暮れてしまい、西名阪自動車道を越え、法隆寺駅近くの踏切を越えたところで、Ｎさんのお宅に到着した。ご家族は突然の珍客にびっくりした様子。ここでも犬には嫌われたようで、ずーっと吠えられた。昨日に引き続き、知らない人のお宅でお世話になってしまった。

（追記）Ｎさんは長く大阪の百貨店に勤務していましたが、定年を間近にリストラに合ってしまいました。そして、２００１年亡くなられたとの報が入りました。ご冥福をお祈りします。
　

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